初めての決算申告で知っておくべき3つの知識

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法人税・相続税 申告お役立ちブログ

2015.04.01

法人税の節税対策

初めての決算申告で知っておくべき3つの知識

私はこれまでに500社以上の法人の税務相談や決算、申告書の作成に携わってきました。事務所全体の法人の申告書作成の累積件数は優に2,000件以上になり、法人の決算申告で数多くの経験を積んできました。
その経験を踏まえて、今回は初めての決算申告に臨む経営者がよく勘違いする間違いや知っておくべき知識を下記の3つに分けてお伝えします。

  1. 赤字決算について
  2. 経費について
  3. 申告期限と納付期限について

1.赤字決算について

開業1年目などスタート間もない決算では年度収支が赤字になることが少なくありませんが、その際「どうせ赤字になるのだから経費はこの位でいいや」と安易な赤字決算を出している会社をよく見かけます。

「赤字申告には法人税がかからず、地方税も均一の均等割税額がかかるだけだから、どんなに経費を増やしても税金は変わらない」と考える方がいますが、これは税金計算の一面しか見ていない誤った考え方と言えます。

多くの会社が申請する青色申告においては、赤字決算によって発生した欠損金額は翌年以降に繰り越しが出来て、利益の出た期の申告計算でその繰り越された赤字欠損金額を課税利益から控除することが出来るのです。
課税利益が減ればそれに基づく法人税や法人事業税などが減るわけですから、正確な赤字金額を計算していくことはまさに大きな節税対策と言えます。

欠損金の繰り越し

しかも青色法人に対する赤字の繰越期間は、実に最長9年間も認められているのです!
個人事業は最大3年間しか繰り越しが認められていないことを考えますと、いかに青色法人の欠損繰越制度が恵まれているかが分かるかと思います。
これをしっかりと活用するかどうかはひとえに、経営者の認識と顧問税理士の努力にかかっていると言えるでしょう。

また、資金が少ない中で赤字になるまで経費を支出した会社では、役員への未払金や借入金などの債務が計上される決算が出来上がるはずです。
この債務は利益が上がる期を通じて役員に返されるものとなりますから、本来会社の経費にすべき支出を安易に経費に計上しないで決算を終わらせると、役員にこれらの資金返済の道がなくなり役員個人の財産は無駄に減っていくことになるわけです。
役員の支出がプライベートなら支払いっぱなし、会社の経費を立て替えたのであれば後でお金が戻ってくる(精算される)、この意識を経営者は常に持つべきです。

青色申告の繰り戻し還付制度

青色申告の欠損金には、繰り戻し還付制度もあります。
繰り戻し還付とは、前期が黒字決算であって法人税を納税した後、今期が赤字決算である際にその欠損金金額を前期に繰り戻して一旦収めた納税額を還付してもらう制度です。

欠損金の繰り戻し

まとまった資金が必要な時など、この繰り戻し還付を使うことにより資金繰りの境地をしのぐことも出来、とても重宝する制度と言えます。

ただし、繰り戻し還付は《請求書》と言う形で税務署に還付のための審査を請求する制度ですから、請求書提出後に税務署から内容の問い合わせが来ることが予想されます。
請求内容が正しいか資料の提出が求められますので、還付申請書は誤りのない慎重な作成が必要となります。
また、確定申告書の提出期限内に併せて提出する必要があることも忘れてはなりません。

では、そもそもどこまで経費が認められるか、次はこの経費の考え方について一例をお話ししましょう。

2.経費について

非上場の同族会社では、役員個人と会社の狭間の“グレーゾーン”の支出がよく問題になります。

例えば、「個人名義の車について会社の経費に出来ないか」というような問い合わせを受けることがあります。
「プライベートの支出をなんとか会社の経費にしてほしい」という願いはそもそも無理な話ですが、上の問いが「個人名義の車だが、その使用については会社の業務に頻繁に使っているので会社の経費に出来ないか」ということであると状況は違ってきます。

そのような状況であれば最初から法人名義で車を購入すればよいのですが、初めての決算においてそのような知識がなかったかもしれませんし、個人事業から法人成りした場合では、元々個人名義で事業に使っていて名義を変えずに現在に至っている場合もあるでしょう。

そのような状況なら、例えば個人が会社に車を“リース”すれば、その賃借料は会社の経費にすることが出来ます。
そうなると会社がその使用で使ったガソリン代、高速代なども経費になる可能性が一気に広がってきます。

あくまでも名義が個人なので、所有に関する支出、例えば車検代、修理代、自動車税などは会社の経費にすることは出来ません。
しかしこれらは個人が受けたリース収入の課税計算で必要経費に使うことが出来るのです。
そのため、多くの場合は、個人側の課税も発生に至らないか、僅少で収まるケースが一般的です。

個人名義の携帯の会社使用、個人契約の自宅の一部の事務所使用など、上記の考え方を適用するとまだまだ経費は考えられると思えてきませんか。

最後は、混乱しがちな申告期限と納付期限についてのお話です。

3.申告期限と納付期限について

申告期限

確定申告は申告期限内に提出することが義務付けられていますが、それを過ぎて申告を行うことも出来ます。これを期限後申告と言います。
法人の申告期限は決算から2カ月以内(後述する「申告期限の延長申請」を行った場合は3カ月以内)であり、これを遅れると青色申請の取消しと無申告加算税というペナルティーがあります。

法人の青色申請は申告が2期連続して期限から遅れて出されると、税務署から取消しの決定が通知されます。もちろん、2期連続申告を行っていない場合も同様に取消しが行われます。
この場合、税務署の「事務運営指針」でこの2期分のうち取消しされるのは後の1期分からで、最初の1期分の青色は取り消されないことになっています。

なお、再度青色申請は可能ですが、取消し通知後1年間はその申請が出来ず、かつ青色の適用は再申請した日の属する期の翌期からとなりますので、取り消し決定分も含めると最低でも3年間の青色申告が出来ない期間が発生してしまいます。

期限後申告にかかる無申告加算税の利率は税務調査に基づく場合は15%ですが、法人が自主的に申告を行った場合は5%となっています。
ただし、上記利率は法人税などの税金が発生する場合にその税額にかけて算出するものなので、赤字決算などで税金が出ない場合は結果として無申告加算税は発生しません。

申告期限の二大ポイント
期限に遅れた申告(期限後申告) 2期連続して遅れた場合 青色申請の取消し
法人税等納税が発生する場合 無申告加算税(5%or15%)

以上から申告期限がどうしても間に合わない場合の最善の選択を考えてみましょう。

決算が大幅な赤字で法人税はかからない状況が確実な場合

期限後申告になっても加算税がかかる心配はなく、2期連続の期限後でないなら青色取消しもありません。決算申告を正しく計算することに主力をおき、その上で早めに申告を行うべきです。
※消費税申告が必要な場合は決算が赤字でも納税額が発生する可能性が大きいです。
この期限後申告については加算税がかかるのを覚悟しなくてはなりません。

決算が黒字になり法人税が発生することが予想される場合

予想される利益があまり大きくなく、法人税額も大きなものにならないのなら5%の無申告加算税も大きな負担とはなりません。
予想される法人税額が大きい、または2期連続の期限後申告となるなどの場合、その選択は高度の判断を要します。
場合によってはとにかく期限内申告を済ませて加算税と青色取消しを免れた上で、後で自主修正申告を行う方法も検討すべきでしょう。自主修正には加算税はかからないからです。

納付期限

次は納付期限について説明します。
確定申告で発生した税額は納付期限内に納税することが義務付けられています。
納付の法定期限は申告期限と同様で、それを遅れると延滞税というペナルティーがかかります。

延滞税は法人税などの本税が払い終わるまで発生する利息のようなもので、平成27年時の延滞税は納期限から2カ月以内が年率3.8%、それ以降は14.6%と高い税率になっています。

まず延滞税は申告が期限内であっても納税が納付期限を遅れるとかかる税金であり、さらに本税が払い終わるまで発生する利率の高い税金であることに注意しましょう。
納税を何回かの分割で行えるかという相談をよく受けますが、それは税務署との分割協議で合意していく範疇のもので、長期の未納は必ず税務署の催促等があると考えるべきです。

申告期限の延長制度

最後にこれもよく誤解される、申告期限の延長制度についてまとめます。
申告期限は事業年度終了の日から2カ月以内が原則ですが、定款で定時株主総会の招集時期が事業年度終了の日から3カ月以内に開催することが記載されている法人なら、事前にこの延長申請を行うことにより、さらに1カ月申告期限を延長することが出来ます。

申告期限は延長出来ても納付期限は延長出来ない

申告期限の延長申請はあくまでも期限内申告期限を1カ月延ばせる制度です。
この制度を使えば決算後3カ月以内の申告書提出でも無申告加算税はかかりません。
ただし、納付期限は延長されないために、延長申告前に概算でも納税をしないと原則として延滞税がかかってきます。

税務署に申請を出すとともに、地方自治体(例えば東京23区なら都税事務所)にも別途延長申請を出す必要がある

税務署に出す法人税の申告書と地方に出す法人事業税等の申告書は連動しますので、法人税の申告の延長申請を出す必要がある場合は、通常地方の法人事業等の申告の延長も必要になってきます。
その場合、税務署に延長申請を出すとともに地方自治体にも専用の延長申請を出さないと適用漏れが出てきますので注意が必要です。

消費税の申告に申告期限の延長申請は適用されない

法人税や地方税には適用はあっても消費税には延長申請の制度がありませんので、トラブルが起こりがちです。
資本金の額が事業年度開始の日で1,000万円未満の法人は、少なくとも開業年度においては消費税の申告は要らないわけですが、輸出企業で消費税の課税選択を出している場合や、一般的な法人でも2期ないし3期以降消費税の申告が必要となる際は注意しなくてはならない点です。

平成14年には某電力会社が消費税の納税を全額期限内に済ませたにもかかわらず、消費税の申告提出を失念して11日遅れで提出したために12億円を超える無申告加算税を課せられる事件が発生しました。
※その事件を契機として、現在では期限内に全額納税が済み、かつ申告期限から2週間以内に申告の提出があるなど条件を満たす場合は無申告加算税が免除されるようになっています。

まとめ

限られた資金をどこに投資し事業を拡大していくか、多くの経営者は資金繰りに悩んでいます。そうした中で、納税額を極力少なくしたいと考えるのはごく自然の流れです。
税金の知識を少しでも蓄え、資金繰り確保に活かしてもらいたいと思います。

ご不明点などありましたら、お気軽にご相談ください。

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