空室期間がある場合の貸家建付地の評価について

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法人税・相続税 申告お役立ちブログ

2022.06.20

相続

空室期間がある場合の貸家建付地の評価について

現金資産を貸付用不動産に換えて相続税を節税


相続税の対策を考える際、真っ先にでてくるのは現金資産を貸付用不動産に換えることではないでしょうか。現金資産をそのまま相続すると評価減などはなく全額が課税の対象となります。不動産の保有であれば現金を保有しているよりも確実に節税に繋がるといえます。まず土地は原則として路線価を基にして評価をしますが、この路線価は実勢価格の8割程度となっており、2割適度評価が下がります。建物については固定資産税評価額を基にして評価をしますが、その評価額は建築価額の7割程度(鉄筋の場合)ですので3割程度評価が下がります。この時点において、土地と建物で約半分ほどの評価額となり大きな節税効果が見込まれます。貸付用不動産の場合、貸家建付地の評価により、さらに評価額が下がります。しかし、これを適用するためには一定の要件を満たす必要があり、賃貸用物件に投資すれば必ず評価減ができるわけではないので注意が必要です。

貸家建付地とは

不動産に詳しくなければ「貸家建付地」は馴染みが薄いことばかもしれません。貸家建付地とは他人に貸すための建物が建築されている土地のことをいいます。貸家とはマンションなどの賃貸住宅やテナントビル、オフィスビル、一戸建ての賃貸住宅などの賃貸物件のことです。自宅用の敷地などはいつでも自分の都合で売却したり貸付けたりできますが、賃貸物件の場合は借りて住んでいる人がいるため所有者の利用が制限されている状態です。このため建物を借りている人の権利を考慮して、土地の評価減が可能となっています。

貸家建付地の評価方法

貸家建付地の評価額は、以下のⅠからⅡを引いた金額となります。

Ⅰ)自用地としての土地の評価額
Ⅱ)Ⅰ×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

たとえば、路線価10万円、敷地100㎡、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%である場合の概算評価額は次の通りとなります。
1,000万円(10万円×100㎡)-(1,000万円×60%×30%×100%)
=820万円
ここで注意が必要なのは「賃貸割合」です。
満室の場合は上記のとおり820万円の評価ですが、半分が空室(賃貸割合50%)であれば評価額は上記の式にあてはめると910万円に上がってしまいます。満室の場合でも親族などに世間相場並みの賃料をもらわずに住まわせている場合は、その部分は空室扱いとなります。貸家建付地の評価では空室の扱いが評価額に少なからず影響を与えます。

空室の1カ月基準とは

賃貸割合の計算における空室はどのように判断されるのでしょうか。ネットや税務調査でよく耳にするのが「空室1カ月基準」です。1カ月以上空室状態だと賃貸扱いにならない(評価額が高くなる)というものです。しかしこの「1カ月」というのは法律条文のどこにも書かれていません。そうなると税務上の取扱い通達や国税庁HPタックスアンサーによることになります。これらをまとめると次のようになります。

・課税時期の前から継続的に賃貸されてきているか
・退室後、速やかに入居者募集が行われたか
・空室の期間中に他の用途に使用していないか
・空室が課税時期の前後の「例えば1カ月程度」であるなど一時的なものであったか
・課税時期以降、継続的に賃貸しているか

この内容を踏まえると、相続時にたまたま一時的な空室であっただけあるのであれば空室扱いとしなくてよいと解釈できます。市況などが悪く空室が続いたとしてもしっかりと広告を出していればたとえ空室期間が1年くらいの場合であっても、賃貸されていたものとして差し支えないと思います。では、3年はどうなのか?5年はどうなのか?「例えば1カ月程度」は単なる例示に過ぎず、明確な期間の定めはないので、経済状況や同一地域の賃貸物件の需給状態や空室状況などを勘案して総合的に判断するしかなさそうです。

まとめ

思い切った借入での賃貸物件の購入。相続税の節税にもなるし、毎月の家賃収入もありといいことずくめのはずだったと思います。しかし、空室が続き、大幅な赤字に転落、そして貸家建付地の評価減も満額活用できない状況に陥っているケースが増えているようです。執筆時点でドル円相場は20年ぶりに135円を突破しそうな勢いです。米国のインフレは加速しつつあります。我が国はどうなるのでしょうか。デフレ時代でも相続税節税に関していえば現金保有は不利でしたが、インフレになると節税云々の前に現金資産の価値は目減りするので他の資産に換えた方が有利になると想像できます。しかし何に投資すればよいのかは非常に難しいです。それでも最低限の経済知識や税制に関する知識は身につけておきたいところです。

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